2009 4月16-19日 PARISセミナーレポート 

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【PARISセミナーレポート 2009/04】

昨年の10月に行われたパリでの演武会、その合間に行われた2日間のセミナーから半年。再度セミナー開催依頼を頂き4回目のフランスセミナーが行われた。
今回はメインセミナー(土、日の2日間)以外に昨年の参加者を対象とし復習を兼ねた特別追加セミナー(木、金曜の2日間)、更にプロのカメラマンによる先生のフォトセッションも行われ、慌しいスケジュールとなった。
そんな一週間の印象に残った出来事を順を追って報告していきたい。

撮影(4月15日)

パリに到着した翌日、写真撮影の為に主催者レオ・田巻さんの案内で市内の撮影スタジオへ。歴史ある石造りの建物の入り口を通り抜けると静かな中庭に。その片隅に長方形をした平屋のスタジオが隣接していた。BGMにフランス語の音楽が流れ、セットもモダンな作り。これぞ芸術の国と言った感じだ。このような現場に立ち会うのは無論初めての私としては非常に刺激的な空間だった。先生と私は道着に着替え撮影が始まる。自然な立ち姿、天地人などカメラマンのリクエストに応じて、正面、真横、斜めと立ち位置を変えながら撮影、映像のチェックとテンポよく続いていく。照明による光と影のコントラスト、そして先生の自然体の構えが絶妙に融合し撮られた映像は、静止画にもかかわらず武術で必要な体内部から湧き上がってくる龍体のうねり、臨場感が上手く表現されていた。武術と芸術両方の凄み、一期一会の瞬間を体感する機会を得た。

セミナー開催

私も何度か他の武術セミナーに参加したことがある。主にその流派の型を行い、対人との様々なシチュエーションでの戦闘理論、ノウハウをレクチャーしてもらいパートナーを交代しながら反復練習し学んでいく流れだ。
阿吽会セミナーの特徴は、武術の本質、体の理合を掘り下げていく事が大前提なので、地味な単練功及び身体を認識する訓練からはいります。そして相対訓練によって使い方を学んでいく。しかし、その中身はけっして根性論ではない。そこには先生が要求している一貫した膨大で緻密なエッセンスが詰まっていて、一朝一夕で習得出来るものではない。しかし要求を守って続ければ確実に変化が起きることは主催者側、前回の参加者も理解しているようだし、もっと阿吽の基本功について深く学びたいとリクエストがあったようだ。その為、復習会とは言え基本的には前回セミナー同様、各メニューの解釈をより細かく解説し先生のデモンストレーションによる動きの分解での説明ーを行い、それを主催者レオさんがフランス語で通訳していく。

追加復習セミナー(4月16,17日)

2日間とも午後6時30分から3時間。平日いうこともあり限定された約20名前後の内容の濃いセミナーである。参加者は先生との時間を深く共有できるのでとても幸運である。
8割が前回の参加者だったが、数名初めての参加者もいた。しかもパリから南800キロ離れた地方から夜行列車で丸一日かけて来られた若者もいた。初めてセミナーに参加来られた方々にどの様に阿吽会を知ったのか興味があったので尋ねてみた。皆さんインターネットの動画デモで先生の動きを見て関心を抱き、その後主催者のブログ等で情報を集めたという方が殆ど。土日メインのセミナーでも同様の回答が多かった。東京の阿吽会でも先生の動きを動画で見て入会している生徒も多く、先生の動きから受けるインパクトは凄いと改めて感じた。

メイン・セミナー (4月18,19日)

0904_1_022日間とも小雨の天気。時間は初日午前9時から昼休みを挟み午後5時まで。2日目は午前9時から午後12時。それにも関わらず当初は50名弱と伺っていた参加者は直前に追加され60名以上となる。会場は前回と同じ300畳ある柔道場。ニース、マルセイユ等フランス各地以外にベルギー、オランダなど隣国からも参加者が来られた。女性の参加者もいらっしゃる。
それだけの参加者がいると学んでいる流派も様々で合気道、空手(松濤館、和道流)居合道と日本の武道は勿論、意拳、太極拳等中国系武術、ロシアの武術システマと多種多様。上座中央に先生が立ち参加者が横一列に正座で並ぶ。主催者レオさんの挨拶でセミナーが始められた。

初めて阿吽会のセミナーに参加する方々も多かったので、初めに先生が阿吽の基盤第一段階でもあるフレーム作りそのための体のコネクション、身体への意識の使い方を分かりやすく説明された。そしてセミナーを進めるに当たり、身体の探求が目的であるが、ただ自分の感覚を感じる事に縛られそこで満足するのではなく、今後この阿吽メソッドを日々の生活にどう生かし将来的には各方面にどう応用していけるかまで意識を持ち、それが達成されて初めて術になる事。武術は本来一瞬で全ての処理が終わるもの、ある種の緊張感を持って行ってくださいというアドバイスをして頂いた。参加者もかなり納得していた。

練習内容 (状況判断)
先生は参加者全体の状況を観て、どのようにしたら要求が伝わるかを瞬時に判断し、その場に適した練習法を状況にあわせて変更、追加していく。正直私も体験していない練習法などを行うので、普段阿吽会で練習している私も毎回必死になっているのが本音だ。今回もその様な展開が多くあった。しかし思わぬ事態に瞬時に適応する神経を養うには、最高の修行であることは間違いない。
午前中は単練功から相体訓練。合間での先生の的確な説明、それを裏づけるデモンストレーション。私自身も東京では聞いたことのない深い説明をされ、気づいたらスタッフであることを忘れ参加者の一人になってしまっていた。セミナー二度目の参加者はもとより初めて参加された方々もその一貫された阿吽のトレーニングシステムに手応えを感じているのが伝わってきた。

デモンストレーション
4日間を通して各練功の意味を分解し、実際の動きとしてどう応用できるかを理解して頂くために先生によるデモンストレーションを多く行われた。東京でも先生の動きを受ける機会があるが、手を抜いて頂いていても、接していて全身に独特の緊張感と余韻が残る。今回も同様に一つの攻撃に対して千変万化に動き変化し気づいた時には垂直に畳に叩きつけられた。その光景を参加者たちは正座の姿勢を維持しながらも身を乗り出し目を皿のようにして食い入るように見ていた。 何故そこまで参加者の視線を虜にさせるのか、先生の動きは一期一会。予定調和もなくその瞬時の状況に合わせて全身のフレームが自発的に変化し続けていく。その動きにはリアリティーがあり、言葉では説明しきれない基本功の重要性を納得させるのメッセージが凝縮されてるのだ。

午後も引き続き相対訓練そして再びハードな静のトレーニング、しかし誰も決して音を上げない。その成果もありセミナー終盤には必然的に参加者の立ち方が変化していった。あっという間に密度の濃いいセミナー1日目が終了した。

剛柔の理解、接触技術(フリー)
2日目は午前3時間のセミナーとなった。夕方の便で帰国しなくてはならなかったからだ。最後のメニューとして剛から柔へ、身体が自発的に対応し相手をコントロールする訓練をおこなう。剛の練習目的はフレームの認識、強化である。全身を使っての対人訓練である。初めて先生の剛体を触れた方殆どは、一瞬感触が固くて非常に重く感じるので筋肉的力みではと錯覚してしまうようだ。実際は体の内部は全く力が抜けていてリラックスしている。だからこそ自由な動きの変化が可能となるのだ。しばらく剛を行い徐々に体を緩ませフリーで攻防を行う。この時は足を動かしたり投げやタックルを行うなどある程度自由だ。打撃以外は何でもある。とは言え実際の要求は難しい。今まで練習で培って来た身体のフレーム、コネクションを意識しながら崩していかなくては本来意味がない。頭の切り替えが本当に難しい。どうしても倒したい倒れたくない気持ちが先行し、フリーに入った瞬間各々が自分の流派の技や得意としているパターン、筋力で対応してしまう。ある者は反動を使ったり、ある者は体を捻らしたりと時間が経つにつれ熱気が帯びてくる。だがフリーは自分で気づけなかった癖が相手を通じて顕著に表れて来るので、お互いにとって非常によい勉強になる。私も最後主催者のレオさんにお願いし相手させてもらったが、東京で同じメンバーとやっているのと勝手が違い課題が沢山見つかりとても勉強になった。やはり「井の中の蛙」になってはいけないと痛感させてられた。

結び

パリ帰国の1週間後には長期3週間のアメリカセミナーを控えている先生にとってハードなスケジュールだったと思いますが、4日間全てのセミナーを全身全霊で教えられていたのが印象的でした。参加者の熱意に先生も自然と熱か入ったのではないだろうか。私も感じたことですがフランスの参加者はとても礼儀正しく真剣、教わろう、吸収しようとする姿勢が素晴らしい。昼休み中黙々と習った事を練習する参加者、セミナー終了後も出来なかった練功を繰り返し復習している方々を多く目にしました。
それは、参加者が阿吽メソッドの必要性を体で認識した表れだと思う。
「ある参加者から”フランスで阿吽会の道場はないのか”質問を受けました」と、主催者レオさんが先生に話されていました。着実に阿吽メソッドがフランスを中心にヨーロッパで定着しつつある、そんな流れを予感させるセミナーでした。また私にとって今後修行を続けていくに当たり進むべき方向性を示して頂けた貴重な1週間でありました。

(渡辺学 阿吽会)